STEP1 M&Aの決断、仲介機関の選択

M&A 有力な事業承継対策はないだろうか

中小企業の社長たちは団塊の世代の方が多いものと思います。 

社長さんたちご子息の方々は、一流の教育を受け、多くが大企業に勤務して責任あるポジションに着かれていたり、弁護士、公認会計士や医師等の専門性の高い仕事をなさっている方も多いことだと思います。 

ご子息の皆さんは、裕福な家庭に生まれ、充分な教育を受け、一流の学校を出ているでしょう。 

 

安定した現在のポジションをなげうってリスクの高い中小企業の社長の後継者に今からなろうという人も少ないと思われます。 

そうなると年齢を重ねた現在の社長さんは、会社の後を任せる後継者をどの確保するのでしょうか? 

多くの中小企業の社長さんが抱いている気持ちは、「俺の代まではなんとかやっていこう。でも次の代はもうわからないから廃業するしかないか。」ということかもしれません。

 

私の周囲の中小企業の社長さんも、同じ気持ちの方が多く、結局後継者がいないものだから事業意欲もなくしてしまい、廃業という選択しかなくなってしまった方を個人的にも、何人か存じ上げています。 

かくいう私も、先代から引き継いだ事業を廃業させた経験があります。 

廃業って、結構、しんどいものです。 

なにが一番しんどいかというと、従業員の雇用と退職金の確保問題です。 

簡単には解決しません。 

年齢を重ねた社長さんが、この問題を解決しようにも気力、体力ともに限界まで追い込まれてしまうこともあります。 

従業員からすれば、「社長が、勝手に廃業を決めても、我々の明日からの生活をどうすれば良いのだ、最後まで面倒をみてくれよ。それができないなら充分な退職金を用意しろ。」という気持ちになります。 

その結果、一部の従業員との間で、揉めたりします。 

「雇ってやって、給料も払ってやったのに。」なんて社長が思っていても、そんなのは屁の突っ張りもなりません。

 

また、会社にある原材料、半製品や製品などの棚卸資産や製造装置などの固定資産は、買うときは市場価格並みの値段でしか購入できませんが、いざ廃業となれば二束三文になります。 

業者も、買ってやるんだからという態度です。 

虎の子の資産を現金化しようとすれば業者に二束三文で買い叩かれた上、従業員に退職金まで支払うとなると社長の引退後の資金をどう確保すればいいのでしょう。 

このように企業を廃業することは、社長にとって気力・体力が必要なうえに、不本意な経験をすることが多いのが現実です。

 

でも、中小企業の社長さんだった方の中には、このような経験をせずに無事に会社を第3者に売却して悠々自適な老後を送っている方もいることをご存知でしたか? 

えッ、そんな方法があるのか? 

それならその方法を教えて欲しいという方も多いと思います。聞きたいですか?

 

答えは、簡単です。あなたが所有する会社の株を他の企業に売却することなのです。

 M&Aというやつです。 

従業員の雇用も継続することもできるし、今保有している資産も適正な時価で評価してくれます。 

その上、社長が創業以来、頑張って会社を引っ張ってきたことに敬意を払って退職金までも用意できるのです。 

まぁ、退職金は株式代金から支払われるのですが・・・ 

 

夢のように話だと思いませんか? そんな美味しい話はあるはずはない。 

この話を読んだ中には、「美味しい話には裏がある。」から気を付けろ、と考えた方も多いと思います。 

 

もちろん、全ての中小企業の社長さんが、M&Aで保有する株を他の会社に売却できるわけではありません。 

他の会社が、お金を払ってもあなたの会社を手に入れたいと思うような会社でなければなりません。 

実際、M&Aを希望して会社を処分しようとする社長の2割程度しか成功しないというのが現実です。

 

「なんだ、全然、おいしい話じゃないじゃないか。」って言われそうです。 

しかし、後継者問題に直面し、悩んでいる社長さんにとって、自社株の売却は有力な選択肢になることをご記憶頂ければと思います。 

最初から諦めるのは誰でもできます。自分を守ることができるのは自分だけです。

 M&Aを真剣に考えてみてはいかがですか?

M&A 会社にも売り時があるのだろうか?

男女関係なく、結婚するのには旬があります。 

今は、離婚もありふれたものですから、再婚だってありふれています。 

だから、結婚なんて、いつだってできるって主張する方もいるでしょう。 

しかし、賢明な方は、自分を一番高く売ることができる時期をご存知です。

 

企業の結婚にあたるM&Aにも「企業の売り時」があるのをご存知でしたか? 

買い手が欲しがれば、いつだって会社を売却できるって主張する方もいるかもしれません。 

しかし、会社も一番高く売れる時期というものは確かにあるのです。 

それを逃してしまうと、安くなってしまったり、場合によっては誰も買収に名乗り出てくれない可能性があります。

 

では、会社の売り時とは、どんな時でしょうか? 

これを考える前に、相手企業は、買収先としてどのような売り手企業を探しているのか考えてみましょう。難しく考える必要はありません。 

M&Aを結婚に例えるならば、魅力的な相手を探している人が圧倒的でしょう。 

それと同じです。 

男性、女性として魅力ある人と結婚したいと思うでしょう。 

それと同じです。 

投資先として魅力的な企業を探しているのです。

 

では、投資先として魅力的なのは、どんな企業でしょうか? 

資金の回収が確実で、早く回収できる企業が良いですよね。 

その上、投資額に対するリーターンが良く、それが長く続けばなお良いです。 

一言で言うなら、現在から将来の収益性が期待できる会社ということができます。 

高い収益性が期待できるものの経営者の後継者問題でM&Aを選択した会社が、買い手が欲しがる会社です。

 

ただ、企業の収益性は、ビジネスモデルに依存しています。 

また、中小企業の収益性は外部環境の影響を受けやすい性格が強いという特徴があります。 

したがって、いま収益性が高くても、それが将来も続く保証はありません。 

規制緩和等で大手企業が市場や地域に参入してきたり、新技術が導入されたりしたら中小企業の収益性が大きく傷つけられる可能性があります。 

このような事態に直面する前の、財務基盤がしっかりした状況で、それなりの収益性を維持できている間が企業の売り時です。 

財務基盤が傷付いたり、収益性が低くなった段階で企業を売却しようと思っても、厳しいというのが現実です。

 

一般に、固定資産等への投資額が少ない軽いバランスシートの企業で高い収益性を実現している企業が好まれます。 

横文字を使えば、ROAが高い企業が評価されます。 

後述しますが、買い手企業の評価額は時価純資産方式で評価しますから、バランスシートが重いと、どうしても投資額が大きくなってしまいます。 

収益性は営業権によって評価されますが、高い収益性が維持されていれば買収後数年程度で営業権の回収は可能となりますから、買い手企業にとって大きな負担になることは少ないでしょう。

できるだけ小さい投資額で、高い収益を挙げている企業がM&Aの買収対象となりやすいのが現実です。

M&A 仲介者とアドバイザーとは違うの?

ここではM&A業界で一般的に考えられている仲介者とアドバイザーについて説明させて頂きます。 

仲介者とは、買い手企業さんを探してきて売り手企業さんとマッチングしてくれる企業を言います。 

アドバイザイーは、既に買い手希望企業さんがいる状況で、売り手企業ないしは買い手企業のどちらかについてM&Aのアドバイスを行なう企業を言います。

 

両者の大きな違いは、売り手企業から依頼を受けて買い手企業を探してきてマッチングをはかってくれるかどうかというところです。 

仲介者も、もちろん売り手企業や買い手企業から受けた相談内容に応じたアドバイスを行ないますが、あくまで中立的な立場に立ったものとなります。 

他方、アドバイザーは売り手企業ないしは買い手企業から依頼を受け、依頼者に有利になるようなアドバイス業務を行ないます。

 

どちらがいいのか、という性質のものではなく、依頼内容が大きく異なるのです。 

その結果、果たす役割も大きく異なります。

 

ただ、よく言われるのは日本と欧米の文化の差異です。

欧米、特にアングロサクソンやユダヤ系の人のように交渉事は相手との戦いであると捉え、交渉時には当事者のみならずアドバイザーも論争に加わり激しく言い合いますが、一たび交渉が終わればにこやかに握手して交渉の成功を祝います。 

他方、日本では、激しい交渉をして相手側と論争をして言い合えば、交渉が終了しても相互にしこりが残ります。 

その上、M&Aアドバイザーが交渉に加われば、論争は一層激しいものとなることが予想されます。 

なぜならば、M&Aアドバイザーは交渉当事者の一方に雇われているので一方の利益だけを追求しますから、買い手、売り手双方にアドバイザーが付けば、相反する利益に基づく相互の主張が激しくなることが予想されるからです。

 

このようにM&Aの仲介者とアドバイザーは依頼者からの依頼内容が異なるので果たすべき役割も当然異なってきます。 

なお、M&A関連書籍などで、「双方代理は利益が相反する買い手と売り手の立場に立つものだから、依頼するのは止めた方が良い。」というものを見かけます。 

民法では、代理とは代理契約に基づき、代理人が行った行為の法的効果が直接本人に帰属するものを言います。

 

M&Aの仲介者は、本人である売り手や買い手から代理権が付与されているわけではありませんし、買い手や売り手の代理として相手側と交渉するのではありません。 

売り手側から買い手を探して欲しいという依頼を受け、買い手を紹介し、株式の売買の仲介を行なうだけに過ぎません。 

仲介者の行為が、直接買い手や売り手に法的効果をもたらすものではありません。 

M&Aの最終的な意思決定は、あくまで買い手や売り手本人が自分の決定に納得して行うものです。

M&Aには、どのくらい費用がかかるの?

M&Aの費用については、各仲介機関によって異なるのが実情です。

報酬体系は、以下のようになっていることが一般的です。 

1.着手料・企業評価料

2.リテナーフィー

3.成功報酬

4.最低報酬 

以下、各項目を概説してみます。 

 

1.着手金(案件化料)・企業評価料

着手金(案件化料、以下総称して着手金と言います)はM&Aの仲介契約を売り手企業の社長さんと仲介機関が締結したときに支払っていただくものです。 

金額は50万円~300万円程度が一般的です。 

なぜ、このように着手金の金額に幅があるのかと言えば、売り手企業の簿価総資産額の大きさに応じて決定されることが多いからです。 

当然、簿価総資産額が多ければ着手金・企業評価料も高くなります。 

着手金は、仲介機関の仲介のための初期の活動費となるものです。 

また、着手金は売り手企業の本気度を試すものです。

 着手金だけでは、仲介機関にとって採算はとても取れません。 

なお、当社は成功報酬型の報酬体系を採用しているため、企業評価料・企業概要書の作成費の実費分を除き、着手金の授受は必要ありません。

 

企業評価料は、今後、M&Aを進めていくために売り手企業の企業価値を評価するものです。 

企業価値の評価を仲介者が社内で行っている場合もある一方、客観的な第3者である公認会計士などの専門家に依頼する場合もあります。 

そのための費用です。 

また、売り手企業に子会社や関連会社がある場合は、別途費用がかかるのが一般的です。

なお、経営計画の策定が必要な場合や不動産の時価の把握が必要な場合は、そのための専門家に支払う費用が別途かかります。

 これらの専門家費用は、費用と言っていますが、投資と考えて頂ければと思います。 

売り手企業が不当に買い叩かれるのを防ぎ、売り手企業の価値を正当に評価するのと同時に、売り手企業の虎の子の保有不動産を二束三文で買い手企業に評価され、買い叩かれるのを防止するための投資とお考えください。 

専門家料金は、かかったとしても総額で数百万円程度です。 

専門家料金を惜しんで、なにも指針がない状況下で売却価格を決定することは無謀以外の何物でもありません。 

なお、着手金・企業評価料等の費用は最終的にM&Aが成約にならなかった場合でも依頼者に返却されないのが普通です。 

 

2.リテナーフィー 

仲介機関はM&Aで、売り手企業からの依頼に基づき買い手企業の発掘を行なうための様々な施策に着手します。 

買い手企業発掘のためのセミナーの開催、買い手企業への訪問・調査、買い手企業に提出する売り手企業の概要書の作成などを一定期間の間、継続的な業務を行ないます。 

この業務を通じて、売り手企業の概要を把握し、買い手企業に興味を持ってもらうことが必要です。 

名目の如何を問わず、このような一定期間の間の継続的な業務に対して支払われる報酬のことをリテナーフィーと言います。 

リテナーフィーには、仲介機関によって着手金を頂かずに月額方式(50万円程度/月)を採用するところもあります。 

他方、50万円~300万円程度の着手金を頂いて月額のフィーを頂かない仲介機関もいますので、仲介契約締結時に仲介機関に確認する必要があります。 

 なお、当社は成功報酬型の報酬体系を採用しているため、企業評価料・企業概要書の作成費の実費分を除き、リテナーフィーの授受は必要ありません。

 

3.成功報酬 

M&Aの仲介が成功し、売り手企業と買い手企業との間で株式の売買契約が締結された時点でM&Aの仲介機関に成功報酬が支払われます。 

成功報酬と言うくらいなので株式の売買契約が締結されなければ成功報酬を支払う必要はありません。 

成功報酬額は、成約金額の多寡に応じて決定されることが一般的です。 

成約金額を、「売り手企業の時価総資産額に営業権を加算した金額」と捉える仲介機関も多いです。 

成功報酬を計算するときの売買契約の金額には、一般的に元経営者の退職金等を含んで計算するのが一般的です。 

また、成功報酬に、買い手企業が引き継ぐ負債額も含める仲介機関もありますから、仲介契約を締結する時に仲介機関に確認してください。 

成功報酬は、レーマン方式と呼ばれる超過累進料率を採用している仲介機関が多いのが実情です。 

レーマン方式は、もともとは、ドイツ人経営学の権威レーマン博士の学説を応用した成果配分方式です。 

 例えば、こんな感じです。

3千万円以下の部分・・・10%

~5千万円以下の部分・・・4%

~1億円以下の部分・・・・5%

~5億円以下の部分・・・・4%

~5億円超の部分・・・・3% 

なお、上記は当社の成功報酬です。

 

4.最低報酬 

M&Aの仲介料がどんなに低くても最低報酬金額が設定されているのが一般的です。 

金額については、バラつきがあり、一概には言えませんが、仲介機関を維持していくために必要となる報酬額が設定されていることが一般的です。 

だいたい、900万円~3000万円程度で設定されていることが一般的です。

不動産を売る手段としての「不動産M&A

不動産を売る手段として有効なM&A(不動産M&A)

 

◆不動産M&Aは専ら本業からの収益がない休業法人に有効

 M&A市場に出てくる中小企業の中に不動産をたくさん抱えている企業さんがいます。 

このような不動産は、往々にして昭和の高度成長期に購入した不動産のため時価に比較して簿価がかなり安いのです。 

不動産、特に土地は長く保有しても減価償却されません。 

そのため時価に比較して簿価が安いと、不動産を市場で処分したときに売却益が発生します。 

法人の場合、個人と異なり、法人の業務で得た儲け等の損益と不動産売却で得た損益を通算して全計算が行われます。 

したがって、不動産の処分によって得た利益のみで税額が計算されるわけではないのです。 

不動産を目的としたM&A(以下、不動産M&Aという)が利用される典型例は、専ら本業からの収益がない休業法人の場合です。 

 

◆不動産M&Aが有効なのは税率の違い 

休業法人が抱える簿価が安い不動産を時価で処分してから会社を清算しようとする場合、残った財産に対して旧来は清算所得として40%超の課税がなされました。 

税制改正により平成22年に清算所得課税制度が廃止され、普通の法人所得として事業によって得た儲け等の損益に通算されて法人税が課税されるようになりました。 

したがって、企業を清算するとき債務免除等の所得と合算して不動産を売却して得られる所得(儲け)に対して法人税が課税されることになります。 

法人所得には平成27年度に実効税率が引き下げられましたが、約32%の課税がなされることとなります。 

法人課税後の残った所得を清算して株主に分配しようとすれば配当に対して課税が生じ総合課税を選択した場合には約20%の税率が適用されます。 

結果、法人所有の不動産を処分してから事業を廃業して清算を行おうとした場合、発生した所得(儲け)に対して会社に対しては法人税が、配当を受ける株主に対しては配当課税としての所得税が課税されるのです。

 

これに対して、M&Aで不動産を所有する法人の株式を売却すれば株式譲渡課税(税率20%)が1回かかるだけですから、税法上M&Aが圧倒的に有利であることが解ります。 

両者の差を表にすると以下の通りとなります。

 

不動産を処分して株主に配当M&Aで会社の株式を譲渡
簿価 50  
売却価格100売却価格   100
法人税等 16  
会社利益 34  
配当課税※  6.8配当課税※    19
株主手取り 27.2株主手取    81

※配当課税:住民税別途

 

売却側からみると会社所有の不動産を売却処分後に会社を清算することよりも不動産を保有したままで会社をM&Aで売却したほうが有利であることがご理解いただけたことと思います。 

ただ、現在の日本の社会・経済情勢、企業の持たない経営に対する志向及び高度成長期に跋扈した不動産神話の崩壊により買収企業側は事業に関係のない不動産取得に消極的なのが現実です。

したがって、このような買収候補先企業に対しては時価よりよほど有利な条件を出さないとM&Aの遡上に乗ることはありません。 

端的に言えば、市場価値よりもかなり低い価格で買収を依頼することとなります。

 

買収側からみれば、不動産を購入するのならば宅建業者を通じて購入すれば重要事項の説明等も当然になされることから安心です。 

これに対して不動産を会社のM&Aを通して入手するのでは重要事項の説明もなく、不動産に隠れた瑕疵があるかもしれず非常に不安です。 

 

そのため、市場価格よりも割安に価格を提示しなければならないのが実情です。 

ただ、M&Aで割安に価格提示を行ったとしても税制上の比較では十分に元が取れます。 

上記の例で、M&Aで会社の株式を2割安く譲渡した場合、配当課税控除後に株主の手取りとなるのは80×0.8=64です。 

株式を3割安く譲渡した場合、配当課税控除後に株主の手取りとなるのは70×0.8=56です。 

不動産を処分して会社を清算後に株主に配当した場合の株主手取り額27.2に比較してM&Aで会社の株式を割安に買収先企業に譲渡しても十分に元が取れることがわかります。 

 

◆不動産M&Aの限界

 

このように売却側にとって非常に有利な不動産を処分する方法としてのM&Aですが、全ての不動産の処分に有効とは限りません。 

市場性が高く有効利用度が見込める不動産に限定される傾向があります。 

M&Aの売却企業の財産の中に流動性が見込めず市場性の低い不動産等が含まれている場合、買収先候補企業がそれを嫌がります。 

したがって、M&Aを成功させるためには事前に流動性が見込めず市場性の低い不動産を処分しておくことが賢明です。 

市場性が見込めない不動産を例示すれば以下のもの等が挙げられます。

 

・土壌汚染が見込まれる不動産 

・不法占拠者等が占拠している不動産 

・不動産の物的、権利関係の基本的事項が確定していない不動産 

・不動産の権利関係が錯綜している不動産 

・法的な縛りを受け、処分、転用等が困難な不動産 

・多額の取り壊し費用が予想される反面、収益性が低い不動産 

・現在の入居者の立ち退きの困難が予想される不動産 

 

不動産がこれらに該当するのか否かを的確に判定するためには、不動産を的確に見る眼が要求されます。 

どの不動産が市場性があるのか、どの不動産が市場性が低いのか等、実物不動産を見る目のみならず、用途転用の可否、権利関係、行政法規の調査能力のみならず不動産の価値を図る力がものを言います。 

そこに不動産M&Aの難しさと共にやりがいがあると言えます。

MAでの譲渡代金の一部を退職金でもらうことの税制上のメリット

 

❐ 中小企業のM&Aは買収である株式譲渡が主流

MAとはMergers and Acquisitionsの略です。 

前者のMergersとは合併のことです。 

後者のAcquisitionsとは買収のことです。 

合併は、例えば日本のメガバンクのほとんどが合併により誕生したことを覚えている方が多いと思います。 

旧都市銀行が数行集まって合併し、メガバンクが誕生し、旧都市銀行は消滅しました。 

このように、合併は、上場大企業が採用する手法で、中小企業ではほとんど利用されていません。

 

❐ 株式譲渡税制上のメリット

中小企業のMAは、Acquisitionsである買収である株式譲渡が主流です。 

買収である株式譲渡が主流になった理由の一つに、税制上のメリットがあります。 

株式譲渡の場合、譲渡益への課税が税制上、上場企業の株式譲渡による売却益課税と同様に譲渡益の20%で済みますから、税負担が軽く済みます。 

これに対して、法人が事業を譲渡した場合、譲渡益に対しては法人税が課税され、法人税納税後の利益を株主に分配しようとすれば、今度は配当課税がかかります。 

いわゆる二重課税で、非常に税負担が重くなります。 

株式譲渡のメリットをご理解頂けたと思います。

 

❐ 売却代金の一部を退職金でもらうと非課税枠があるから税制上有利 

株式譲渡と共に、長年の間、会社に貢献してきた社長さんなら、株式譲渡の代金の代わりにその一部を退職金でもらうことも可能です。 

退職金は、40万円×(役員としての勤続年数)が非課税になります。 

役員としての勤続年数ですから、それ以前に従業員であった場合は、その期間はカウントされないので注意して下さい。 

このように税法上、株式譲渡によるMAは、中小企業経営者にとって税法上、非常にメリットが高いものということができます。 

この税制上のメリットを最大限利用して、引退後の余裕資金の原資として株式売却益を確保することをお勧めします。

 

※ご注意

ご説明した内容は平成27年度のものです。税制は毎年、猫の目のように変わります。お近くの税務署、税理士等に税率のみならず、税制上必要となる要件、書式等をご確認いただけますようお願いします。

M&Aの売り手経営者側の企業売却の動機(理由)

MAで自分の会社の売却を決断した経営者には、どのような動機があるのでしょう。

  

❐代表的な売却動機 

代表的な動機(理由)を3つ上げて紹介します。 

①後継者難からの先行き不安を解消し事業承継のためのM&A

②更なる発展を目指すためのM&A

③不要な事業の譲渡目的のM&A

 

以下、順次説明します。 

 

①後継者難からの先行き不安を解消し事業承継のためのMA 

後継者難が生じる理由は、経営者の一族が経営に成功し、子弟教育に力を入れた結果です。 

教育は元来、人の成功にとって必要なものです。 

したがって、子弟を教育するのはとても良い事です。 

他方、教育に力を入れられ、良い教育を受けた子弟は、良い大学に入学します。 

良い大学に入学し、卒業後に大企業に入社し、そこで結婚することになるでしょう。 

結婚して子供もできれば、奥さんの意向も無視できません。 

今の生活に不自由がなく、子供の教育にも力を入れた結果、旦那さんが大企業を退職して中小企業の社長になることに賛成する可能性は低いでしょう。 

その結果、息子が跡を継がない企業が増加します。 

 

息子が跡を継がないと、誰に継がせようかと悩み、従業員が候補に上ることとなります。

 しかし、会社に借入金があれば、社長が借入金の保証人になり家屋敷を担保に提供していることでしょう。 

従業員が社長になっても、会社の保証人になることを銀行が認め、担保も新社長が肩代わりできれば問題はありません。 

しかし、往々にして従業員にその能力も資力もないことから、元からの社長が引退後も会社の保証人や担保の引き受けをせねばならなくなります。

 

また、後継者がいない高齢の経営者だと新規事業にも手を出そうとせず、往々にして守りの経営に回り、取引先、銀行等が先行きに対して否定的になり、従業員も先行きに対する不安感を持つようになります。 

そうなる前、まだ業績も堅調の内に、先が見える経営者がMAで会社を売却し、買収先から有能な経営者を迎えて事業の存続を図ろうとするのが事業承継のためのMAです。

 このような意味からMAが有効かつ積極的な事業承継策になり得るのです。

 

 

②更なる発展を目指すためのMA 

会社が小さい間は、経営者に事業意欲が強く新規事業へ乗り出そうとしても、経営リソースも小さいがゆえに諦めざるを得ないことが往々にしてあります。 

他方、中堅から大手企業にしてみれば能力の高い社員はいるけれど、経営者としての経験値がないがゆえに新しい事業に取り組みことに二の足を踏まないとならないこともあります。 

会社の売却側にすれば、大手、中堅企業の傘下に入り、会社の信用力を付け、経営リソースを拡大できれば願ったり叶ったりです。

 

また、大手、中堅企業にすれば幹部候補生としての従業員の経営者としての経験を積む場としてMAで購入した会社で新規事業の修羅場を積ませることができれば良い機会になります。 

ここで売り手、買い手両者の思惑が合致します。 

売り手企業の経営者は、経営陣を離れることを前提とするのではなく、従来通り経営陣の一員としての場所を確保しながら会社の発展を支えることを目指すことになります。

 

 

③不要事業の譲渡目的のM&A 

昭和から平成に代わりかなりの時間が経ちます。 

その間に、日本の経済環境も大きく変わり企業を取り巻く状況が大きく変わりました。

 高度成長期の名残があり、まだ日本が世界第2位の経済大国と言われた時代は、ちょっと大袈裟ですが物は造れば売れた時代でした。

 その時代、企業は多角化して儲かると思われる分野に積極的に打って出ました。

 多角化の時代でした。

 

しかし、バブル崩壊後、失われた20年と言われるように、日本経済が低迷し、新興国が工業国化するようになって、日本の製造業とバッティングするようになると様変わりしました。

 そうなると単に物を作っただけでは企業は生き残れません。

 企業は本業に人、モノ、金をつぎ込み生き残りをかけるようになりました。

 集中と選択の時代です。

 

多角化した分野は、収益力が低いので企業にとりお荷物になったのです。

 多角化した分野を事業ごと譲渡し、本業に経営資源を集中させる時代となったことから、不要事業がMAで売却されるようになったのです。

M&Aの買い手企業側の企業買収の動機(理由)

MAで会社を買収する企業には、どのような動機があるのでしょう。

 

❐ 買い手企業側の企業買収の4つの動機(理由) 

代表的な動機(理由)を4つ上げて紹介します。 

①既存強化目的の買収

②周辺分野への参入目的の買収

③関係強化目的の買収

④投資ファンドによるMA投資目的の買収

 以下、順次説明します。

 

 

①既存強化目的の買収 

既存事業を強化させ売上げを拡大させようとしても、既存の場所、既存の業務では、簡単には売上げを増やし、利益を獲得させることはできません。

 

他方、既存事業を強化し、売上げを拡大させるための一番早い手法は、未開拓の地、未開拓の分野を手掛けることです。 

既存事業がまだ未進出の地に営業所を設置すれば、それだけで売り上げ増が可能です。

 しかし、新規営業所を設置して営業マンを派遣し、新規客の開拓を行なおうとすれば売上げを作るのに最低でも1年、地域よっては閉鎖的な地域だと複数年かかる場合も珍しくありません。

 

それなら既にある会社を買収すれば良いという発想が出てきます。 

既にある会社なら、営業体制が出来上がっており、既存客を多数保有しえちるはずです。

 こういう会社を買収すれば買収後に、直ぐに売り上げが上がり、利益獲得に貢献してもらうことが可能です。 

MAが時間を買うというのは、こういうことを意味します。 

売上拡大、利益獲得にMAが非常に有力な手段であることが解ります。

 

 

②周辺分野への参入目的の買収 

既存事業の売上げが頭打ちとなり、既に峠を越えた状況では、従来の分野での成長は覚束なくなります。 

それなら既存事業の周辺分野に進出し、売上げを作ろうという発想が出てきてもおかしくはありません。 

なぜなら、既存事業なら顧客が同じですから、既存客に新しい商品を売り込むだけで済みます。

 

ゼネコンに出入りしている建設資材屋が、床工事の分野に進出したり、天井工事に進出するような場合が典型例です。 

この場合、技術を新しく勉強して進出すれば実績を作るのに23年かかってしまうことが往々にしてあります。 

それならば既存の会社を買収して技術のみならず営業先も手に入れられたら良いですよね。

 

このようにMAは周辺分野への進出にも有効な手段ですから、事業意欲旺盛な企業経営者が有効に使用しているのです。

 

 

③関係強化目的の買収 

業界の川上企業とか川下企業という言葉を聞いたことがあると思います。 

川上企業とは原材料、部品等を供給する企業です。 

川下企業は、販売等を担う企業です。

 

この川上企業が川下企業を買収したり、逆に川下企業が川上企業を買収して関係強化を図ることがあります。 

この動きは日本よりも米国で多くみられます。 

垂直統合という言葉を聞いたことがあると思いますが、企業が商品の開発、生産及び販売を一手に行うことを指します。 

本来、企業には得意分野、不得意分野があります。 

製造が得意な企業、販売が得意な企業、部品製造が得意な企業、原材料供給が得意な企業です。 

本来、企業は得意分野に事業を集中化させた方が収益力は高くなるという考えが事業の選択と集中です。 

他方、多角化とは異なる動きですが、川下企業が事業の川上企業を買収して自社で一貫的に事業を行なおうという考えもあります。 

例えば、小売業企業がPB製品を製造する企業を買収して自社で製品企画・製造・販売を一手に行なおうとするのが、関係強化の代表例と思います。

 

 

④投資ファンドによるMA投資目的の買収 

投資ファンドは機関投資家等の有力な投資家から資金を集め、資金運用の一環として事業買収したり経営陣のマネージメントバイアウトの資金を提供したりします。 

 

投資ファンドによるMA投資が事業会社のMA投資と大きく異なるところは、出口戦略があるということでしょう。 

他人さまから出資を得るのに、例えば、投資期間5年間で10%の利回りで投資資金を複利で運用することを前提にしています。 

必然的に5年後には約束通り元本と10%複利で運用した利益を出資者に分配する責務があるからです。 

1億円を5年間10%の複利で出資してもらうとします。 

10%5年複利は元本を含め約160%になりますから、1億円は5年後に元本を含め16千万円で出資者に返済・分配する必要があるからです。 

これを出口戦略と言い、事業会社がM&Aを行なうと基本的に買収企業を持ち続けることが多いのと大きく異なる特徴が投資ファンドによるM&Aと言えます。

 

ただ、事業会社によるM&Aによる企業買収も、投資ファンドによるM&Aによる企業買収も企業活動という事業の循環過程に資金を投じて利益を得る行為ですから投資に該当する点は共通と言えます。 

事業活動への投資ですから、元本の確保と利益の獲得が目的になる点は両者ともに共通です。