STEP2 企業の価値評価と買い手候補使者の探索、選定

M&A うちの会社を欲しがる会社なんてあるの?

 「当社みたいな中小企業を欲しがるような企業なんてあるのか?」という疑問を持って見える社長さんも多いと思います。 

結論から言えば、買い手のニーズに合致すればM&Aの対象となります。

 

マスコミで中小企業のM&Aニュースが取り上げられることはありませんが、大企業の場合、新聞の一面で取り上げられるので、皆さんも読んだことがあると思います。 

彼らがM&Aで企業買収する目的は、大きく分けて3つ程度かと思います。 

 

1つ目は、売上高を大きくさせて業界内のシェアを高めたい。(売上高の拡大) 

2つ目は、利益率を向上させて株主からの期待に応えたい。(利益率の向上) 

3つ目は、多角化を図って異分野の成長を企業内に取り込みたい。(企業の成長)

 

以上以外にも、様々な目的でM&Aを実行させることがあるかもしれませんが、資本主義である限り企業の存続を前提とする上記3つは欠かせない目的と思います。 

企業にとって売上高の拡大、利益率の向上並びに企業の成長は永遠のテーマと言っても過言ではありません。その目的を達成させるための有力な手段がM&Aなのです。

 

事業を行なうには昔から、人、物、金が必要だと言われています。これら3つの条件以外に事業の成功には時間が欠かせません。 

M&Aは、これらの条件のうち、時間、人と物を金で買うことができるという有力な手段となるものです。 

新しい地域でビジネスを展開したり、新商品を発売するにしても、ビジネスを成功させるためには時間、人や物が欠かせません。 

地域に密着するなり、新商品を市場に認知させるためには時間と金がかかります。 

この時間を解決してくれる有力な手段がM&Aなのです。

 

既存企業を買収することで、これ等の問題点を解消することができるのです。 

既に、その地域や業界でビジネスを行なっているのですから、認知度があり、市場シェアが確保されているからです。 

これ等の条件を裏返して考えると、企業規模が小さすぎる場合や収益性が低い場合は、買い手にとってM&Aの誘因が低くなります。 

業種にもよりますが、売上高が数千万円、従業員数名の企業だと買い手にとって市場でのシェアをM&Aで急速に大きくできませんし、利益にも貢献できません。 

そういう意味から言って、M&Aを行なうには、売上高や利益についてもある程度の規模は必要になってくるものと言えます。 

その規模は業界によっても異なるので一概には言えませんが、売上高2~3億円以上程度がひとつの目安かと思います。

ただ、他社にはないオンリー1がある企業の場合、買い手がそのオンリー1を狙ってM&Aの興味を抱く可能性はあります。

M&A 買い手はどういう会社を評価するの?

買い手企業がM&Aで企業買収する目的は、大きく分けて3つ程度です。 

1つ目は、売上高を大きくさせて業界内のシェアを高くさせたい。 

2つ目は、利益率を向上させて株主からの期待に応えたい。 

3つ目は、多角化を図って異分野の成長を企業内に取り込みたい。 

これ等の目的を、時間をかけずに達成できる可能性が高い手段としてM&Aを実施するわけです。 

一般にROAが高い企業が好まれることは前述したとおりですから、逆に重武装のバランスシートの会社は中小企業の評価額が時価純資産額に営業権を加味した方法で求められる傾向が高いことから投資額が大きくなってしまう可能性が高くなる。

また、企業規模が小さく数名の従業員しかいない企業の場合、M&Aを買い手企業が実施しても上記目的を達成することができないことが多い。

 

ここでは会社の組織面から考えてみたい。

小規模の企業の場合、株式の売り手であるオーナー社長が会社の実権を握ると同時に大黒柱として活躍していることが多いのが一般的です。 

オーナー社長がM&Aで株式売却後に引退してしまえば、企業が立ち行かなくなることが目に見えています。 

また、オーナー社長ばかりでなく、気心が知れた従業員も大きな戦力となっていることが多い。 

彼らがM&Aの実施で、日ごろから気心が知れた社長と一緒に会社を辞めるということになれば、せっかく買収した会社が立ち行かなくなってしまいます。 

このような事態は、買い手企業は避けたいはずです。 

ですから、オーナー社長がM&A後に引退して経営陣が変わっても会社の実務が回っていくように組織として経営されている会社が買い手企業に評価されます。 

組織で動いている会社ならば、社長がいなくても日常業務は回ります。

 

また、企業によっては、仕事が各人に属人的に帰属し、その人以外では何もわからないという会社もあります。 

これも社長がいなければ会社が回らないのと同様に、その従業員がいなければ日常業務がまわりません。 

これでは、M&Aで経営主体が変わった時に、その従業員が辞めてしまえば組織が立ち行かなくなる可能性が高くなります。 

このような事態を買い手企業は避けたいはずです。 

せっかくM&Aを実施して企業を買収したと思ったら従業員が辞めてしまい、会社が立ち行かなくなったらM&Aを実施した意味がありません。

 

また、会社と社長との関係が不透明であったり、会社を私物化しているようなではM&Aで買い手企業から歓迎されません。 

平時では、中小企業の社長と会社との関係が不透明であったり、会社を自分の財布代わりに使用する等、会社を私物化していようがいまいが、誰にも迷惑をかけていないので問題はありません。 

しかし、M&Aで会社を第三者の企業に売却しようと思えば、このような状況では買い手企業は現れません。 

会社を自分の財布代わりに使っていては、会社に利益が残りませんし、使途不明金などが発生している可能性が高くなります。 

会社と社長との関係が不透明な例では、自宅を会社の寮にしている場合があります。 

会社の寮という名目で会社の金で自宅を建て、固定資産税や維持修理費を会社の費用で出しているというような場合があります。 

平時であれば、特段に問題になることはありません。 

しかし、M&Aを行なおうとすれば、早急に会社と社長の個人財産とを分離して公私の別を付けることが必要です。 

このように、買い手企業がM&Aを実施する目的と目的達成が困難な企業について概説しました。 

 

買い手企業が評価する企業は、この反対例となります。 

会社内で部下に権限委譲を進め、社内にキーマンを複数人つくり彼らに実務を任せ、決定権を委譲すると共に責任をとらせる体制がある企業が評価されます。 

仕事も社員の属人的な部分を排除して組織的に動く体制がある企業が評価されます。 

公私の別はもちろん区別して、私的な取引を会社と行なうようなことがない企業が評価されます。 

過剰な節税を排し、会社に利益を残している企業が評価されるのです。

M&A 企業価値の求め方、価格の決め方

M&Aで、会社はいくらになるのか、今だったらいくらの価値があるのか、非常に気になるところです。

結論から言えば、売買価格は、自由主義経済の中では当事者間で自由に価格を決定することができるので、当事者間で自由に価格を決定すれば良いだけです。 

でも、これでは力が強い方が有利にことを運んでしまい、弱者は強者の言うとおりになってしまう可能性を否定できません。 

そこでM&Aの多くの取引では、客観的な立場にいる第三者の公認会計士等の専門家に企業の価値評価を依頼して、それを基にして価格付けを行なうことで、売り手の権利を護り、公正さを確保するようにしています。 

専門家の評価額に比較して買い手の指し値が極端に低ければ、相手の理由を確認の上、納得できれば交渉を継続すれば良いし、納得できなければ交渉を打ち切ればいいのです。 

 

では、第三者である公認会計士等の専門家は、どのように企業価値を評価するのでしょうか。 

これについてお話します。 

結論から言えば、中小企業のM&Aにおける企業評価ではコストアプローチのうちの「時価純資産価額に営業権を加えた価額」で評価されるのが一般的です。 

経済学的にはモノやサービスの価格は需給が均衡したところで決定されると説明されます。 

しかし、経済学上の需給の均衡点を探し出すことは現実社会の中では基本的に不可能です。 

 

そこで、需給の均衡点の代替として、もの、サービスや企業の評価額は3つの側面からアプローチされることが一般的です。 

一つ目はコストアプローチと言われる費用性に着目した評価方式で、供給者側の視点に立った価格の性格を有しています。時価純資産方式もこの考え方に含まれます。 

二つ目はマーケットアプローチと言われる市場性に着目した評価方式で、市場での実際の株式などの取引価格を基にしたものです。 

三つ目はインカムアプローチと言われ投資収益性に着目した評価方式で、配当還元法やDCF法などがこの方式に含まれます。 

どのアプローチ方法も企業価値に真摯にアプローチしようとするもので、説得力を有します。

 

一つ目のコストアプローチは、供給者側の視点に立ちますから、企業へ投下した資金を基にして価格付けをしようとするものです。 

普通、企業は投資家から集めた金と銀行から借り入れた金を元手にして企業活動に必要な資産を購入して企業活動を行ないます。 

当然、経営者は、その時点で、最善と考えられる経営判断の下で投資判断を行ない、資産を選択し企業活動を行ないます。 

したがって、企業がなす投資は、建前として基本的に無駄な投資はありません。 

時価純資産方式は、企業が保有する総資産から銀行借入金等を控除して得られる純資産額を時価に直して企業価値を求めようとするものです。

 

マーケットアプローチは、市場で取引されている株価を基にして企業の価値評価をしようとするものです。 

企業の株価は、市場で実際に取引された価格であることから説得力を有します。 

しかし、実際の市場で取引された株価は小口の株の価格で、その価格には企業支配権が含まれていない難点があります。 

同じ業界の類似した上場企業の株価で、果たして、中小企業の株価を求めることができるのかという疑問も生じる難点があります。 

 

インカムアプローチは、需要者側の視点に立ち、需要者側がその企業に投資したときに得られる利潤から企業価値を求めようとするものです。 

企業収益を標準化させ、その標準的な収益が永久に続くと仮定して、企業が生みだすフリーキャッシュフローを還元利回りで資本還元して投資価値を求めることが可能です。 

また、企業が行う配当を資本還元することで企業の純資産額を評価することも可能です。 

DCF法は企業が生みだす将来収益を基に投資価値を判定するインカムアプローチ手法の一つです。 

 

中小企業のM&Aでの企業評価は、先述したとおりコストアプローチのうちの「時価純資産価額に営業権を加えた価額」で評価されることが一般的です。 

この手法は、企業の貸借対照表の純資産額を時価に換算し直して、これに対象企業の超過収益力を反映した営業権を加味することで求めます。 

超過収益力を反映した営業権を加味することでインカムアプローチ的な考え方を中小企業の企業価値に反映させようとするものです。 

営業権を算出する方法には理論上、様々な方法がありますが、過去3年平均の利益の35倍程度が採用されることが一般的です。

 

企業の利益には様々な尺度がありますが、一般的には経常利益、営業利益や税引後の営業利益などが採用されることが一般的です。 

ここで説明した中小企業のMAにおける企業価値の求め方は、きわめて単純化した目安に過ぎません。 

実際にはMAを依頼する仲介機関を通して専門家にきちんと算定してもらうことが必要になります。

M&A 売却価格を上げるために企業価値を高める方法はあるの?

会社を売る方は、様々な目的をもって中小企業をM&A市場で売り出されます。

 

他方、会社を買う方の目的は、大きく分けて3つ程度に絞り込むことができます。 

1つ目は、自社の売上高を大きくさせて業界内のシェアを高くさせたい。 

2つ目は、自社の利益率を向上させて株主からの期待に応えたい。 

3つ目は、多角化を図って異分野の成長を企業内に取り込みたい。 

以上以外にも、様々な目的でM&Aが実行されますが、資本主義である以上、企業の存続を前提とする上記3つは欠かせない目的です。

 

企業にとって売上高の拡大、利益率の向上並びに成長は永遠のテーマと言っても過言ではないのです。

これ等の目的を達成するための手段としてM&Aが利用されます。 

 

買い手企業として、M&Aを利用して企業を買収するのは、投資行為です。 

投資であるゆえに、投資対象から収益を獲得することが是非とも必要になってきます。 

買い手企業にとって魅力的に見え、高い投資価値がある企業が魅力的なのです。 

ここで意味する企業価値は投資価値となります。

 

企業価値を高める方法とは、結論から言えば、収益力を高めることです。 

したがって、企業価値を高める方法はあります。それは、企業の収益力を高めることです。

 継続企業を前提とします。 

企業が収益を永久に生みだす存在だと考えた場合、収益を利回りで割り戻すことで企業の価値を計算することができます。 

企業価値は、以下の式で表示できます。 

 

                 e

P = ――――――

            r g

 

 P:企業価値

 e:企業活動から得られる収益

 r:利回り

 gGDPの成長率

 

この式は、「企業価値は、企業活動から得られる収益をGDPの成長率以上の利回りで割り戻すことで求めることができる。」ことを意味します。 

企業はGDPの成長率以上の利回りを生みだすことが要求されていることに着目して下さい。 

もし、利回り(r)がGDPの成長率(g)以下であれば、分母である(r g)がマイナスになりますから、企業価値(P)もマイナスとなってしまいます。 

たとえ企業が収益(e)を生みだしても企業はマイナスの価値しかないことを意味します。 

そして分母を構成する利回り(r)とGDPの成長率(g)が一定とすれば、企業価値(P)を高めるには分子である収益(e)を高めることが必要になります。

 

企業価値を高めるには、特別な事は何もなく、収益力を強化するしかないのです。 

収益力の強化と簡単に言っても、実行するのは簡単じゃありません。 

やみ雲に動いても力を浪費するばかりです。 

まずは、自社の強みと弱みを把握することが必要です。 

強みを伸ばし、弱みを減らすことです。

 

M&Aの場合、特に注意してほしい点は、常に時間を意識する点です。 

M&Aを決定して実行に移せば、企業が強みを生かし、弱みを減らすために残された時間には必ず締切が付きまといます。 

実施が容易で時間がかからないものを中心に取り組む必要があります。 

強みを伸ばすにしても時間や費用がかかり、製造業などでは新規の設備投資が必要な場合もあるでしょう。 

通常の場合以上に、新規の設備投資に踏み切るには注意が必要になってきます。 

なぜならば、まだ利益を生みだしていないような設備に借金をして多額の費用をかけても、M&Aでは借金と多額の設備は評価しないからです。 

借金や多額の設備は、むしろマイナス材料にみられる可能性さえあります。

 

M&Aで評価されるのは現在の収益であって、将来生み出せれるかどうかはっきりしないような計画上の収益ではない点に注意を払ってください。 

将来の収益は、先ほどの式の中で考慮されていません。 

考慮されるのはあくまで、今、現在、企業が実際獲得している収益です。 

自社の強みや弱みを把握した後に、業務計画書を策定し、着実に業務を遂行していく必要があります。 

特に、中小企業の場合、外部環境の影響を受けることが多いことから事業計画書を作成しても景気の影響を受けてしまうため、計画書通りに事業が運ぶことは少ない傾向にあります。

 

しかし、買い手企業からすれば、買収する企業の現在の収益力は財務諸表等で把握可能でも、買収後にどれだけ収益を実際に獲得可能なのか、という点がわかりません。 

事業計画書があれば、買い手企業にとって買収判断の有力な資料になります。 

これからM&Aで自社株の売却を検討している経営者の方は、ぜひ事業計画書を作成し、今後、企業価値をどの程度、上昇させることが可能なのかを買収企業に提示することができれば心強い資料になります。

M&A 節税目的で利益を圧縮してきた会社の価値は低くなるのか

MAで買い手から見れば、投資すれば確実に利益を生みだすと判断できる企業が好まれます。

特に、売上高や利益が伸びている企業は、成長過程にあると判断され好意的にみられます。 

このような企業がMA市場に出てくれば、高い価格で買収されることが一般的です。

 

他方、多くの中小企業は節税のために利益を出さないようにしているのが実態です。 

中には、運転資金に困らなければ、毎年、少しずつ赤字を計上する企業が一番賢い、という社長もいるほどです。 

しかし、節税が行き過ぎた企業は、M&Aで、いざ企業を売却しようとしたとき、思ったほど高く売れないことに留意する必要があります。

 

中小企業のMAにおける企業評価額は「時価純資産額に営業権を加えた価額」が重視されることを述べたと思います。 

節税を毎年行ってきた会社は、過去、利益をほぼ計上してこなかった会社です。 

したがって、企業が生みだす利益を基礎とする営業権が発生しないことになります。 

「過去、節税のために利益をださなかっただけだ、この会社はやりようによっては充分に利益が出る会社だ。」と社長さんが力説しても、過去数年間の間、利益が現実に出ていない以上、その話は通用しません。 

買い手企業から見れば、投資価値に値しない企業とみられる可能性が十分に高くなります。

 

会社を売却しようと考え、急に利益をだそうとしても、営業権として評価される利益は、過去3年から5年程度の利益となります。 

営業権の価格を会社の実力に見合った分にしようとしても、直ぐには間に合わないことをご理解頂くしかありません。 

将来を見据えて、MAを検討するなら、納税した上で、会社に充分な利益を残すようにしなければならないことをご理解頂ければと思います。

M&Aのために事前に準備しておいた方が良い書類1

会社法は、企業に対して株主名簿の作成、保持、株主総会議事録、取締役議事録などの書類の整備を要請しています。 

MAでは、コンプライアンスを重視する買い手企業から、これらの書類の整備状況の確認が入りますから、書類類を事前に整備し保持しておくことが望ましいのです。

 

会社は株主名簿を作成し、本店に備えなければなりません。 

株主名簿には株主の氏名・名称、住所、株主の有する株式の種類・数などを記載すべきこととなっています。 

管理が手薄な中小企業では、株主名簿があっても株主の変遷が正しく記載されていない場合があります。 

株主が社長一人だけの場合では問題もないのでしょう。

 

他方、商法が改正される以前の株式会社の場合、会社設立に当り発起人が最低7人以上必要であったはずですから、発起人であった人たちが株主としての変動を株主名簿上正確に記載されている必要があります。 

中小企業のMAでは株式を売り手企業から買い手企業が買い受ける株式譲渡の方式で取引されます。 

取引される株式の所有者がはっきりしないのでは、譲渡契約を怖くて締結することができません。 

MAを検討なさっている社長さんは、その事前準備として株主名簿の整備をなさっておくことをお勧めします。

 

ここで注意すべき点を1つ上げれば、整備された株主名簿が本当に正確なものなのかどうかという点です。 

社長以外の人が少数株主として株式を保有している場合、その株主が真実の株主なのかどうか、名義上の株主に過ぎないのかという点をハッキリさせておく必要があります。 

名義上の株主とは、出資の実態がないにもかかわらず名義上株主として株主名簿に記載されている株主のことを言います。

 

なぜ、このような株主としての実体のない名義上の株主がいるのかと言えば、上述の通り商法改正以前の株式会社の場合、会社設立に当り発起人が最低7人以上必要であったからです。 

会社設立後、名義の書き換えを行って名義株の解消を行なっていれば問題はなかったのでしょうが、そのまま放置されていた会社が結構あったのです。 

会社設立後に時間が経過し、名義人が本当の株主かどうか不明になってしまったものも相当数あった模様です。

 

MAを希望しなければ問題が表面化することもなかったのですが、一たび会社を売却しようとすれば、名義株の問題を解消しないで売却することは事実上、不可能だと考えた方が良いです。 

そのためにも、MAを検討する準備として名義株については、名義人から名義株であるという証拠の念書をとるか、正規の株式としての適正な時価で買い受けておくことをお勧めします。

 

株主が所在不明で株主への通知、催告が継続して5年間到達しておらず、かつ剰余金の配当が継続して5年間受領されていない場合等には、会社は株主が保有する株式を処分することができます。 

処分方法は①競売、②市場価格ある株式については市場価格での売却、市場価格のない株式の場合は裁判所の許可を得て競売以外の方法による売却の2方法です。 

処分後、処分された株式を保有していた株主は株主としての地位を失い、会社の債権者になります。 

会社は所在不明株主が現れたら、処分した株式の代金を所在不明株主に交付しなければなりません。 

 

株券が紛失してしまっていた場合、株券を紛失してしまった株主は、会社側に紛失してしまった旨を申告して、申請後1年間が無事経過すれば紛失してしまった株券は無効になり再発行が可能になります。 

このように株主名簿の整備や株券の整備、再発行は年単位の時間がかかります。 

MAの交渉を開始してから問題が表面化した場合、交渉をストップせざるを得なくなります。 

将来、MAを検討しようと考えている社長さんは、できるだけ早めに株主名簿や株券の有無等の状況を確認しておくことが賢明です。 

株主名簿や株券に関する事項は司法書士さんが対応可能です。 是非、一度相談しておくことをお勧めします。

M&Aのために事前に準備しておいた方が良い書類2

MAを行なうに当たって必要になる書類は、株主名簿以外にも以下のものが挙げられます。

A.定款

B.株主総会議事録

C.取締役会議事録

D.就業規則

E.各種規定(従業員退職金規定、役員退職金規定)

F.決算報告書

G.税務申告書

H.その他

 

 

A.定款は最新のものを用意しておく必要があります。 

 

B.株主総会議事録、C.取締役議事録は直近3期のもので添付資料等があればそちらも用意しておくべきです。 

過去に役員退職慰労金の支給がなされたり、自社株の取得等を実施した際の株主総会議事録、取締役議事録並びに計算根拠等の添付資料等は、その支給や取得金額が適法になされたものであることを証明するものです。 

また、役員登記の変更手続きについてもこれらの議事録が必要とされています。 

議事録が未整備だと役員登記の手続きが正規になされていないと見做される可能性が高くなります。 

したがって、当該年度の株主総会議事録や取締役議事録はきちんと作成し管理しておく必要があります。 

もし、未整備だという会社は、司法書士が専門分野なので一度相談なさることをお勧めします。 

 

E.各種規定のうちの従業員退職金規定並びに役員退職金規定は貸借対照表の退職金に関する負債額を正確に評価するための根拠となるものです。もし、規定がないようでしたら早急に定めておく必要があります。 

ただし、従業員の退職金については「中小企業退職金共済制度または特定退職金共済制度を利用することでオフバランス化することが可能ですから、共済制度の利用によって規定の整備が不要になります。 

役員退職金規定がない状態でMAに入った場合、買い手企業の規定に準じて当該会社の役員退職金規定を定めるということもあるかと考えられます。

 

以上、中小企業のMAで問題になりやすいため事前に整備しておいた方が良い点について概説しました。 法改正等によって内容の変更があるかもしれません。 

上記内容は参考程度に留め、独りよがりの判断は危険なので行わず、必ず、司法書士等の専門家の意見を徴してことに当ってください。

組織的に動く会社の体制を整備しておくべき

❐中小企業の多くは社長に権限が集中している

 先日、M&Aの相談にみえた社長さんとお話していると、社長さんの会社の実態が良くわかりました。 

社長さんが会社の実権を全て握って、若社長もいるにはいるが、ほぼ社長が決済しないと動かない会社の体制です。

 中小企業の組織体制は、このように社長に全権限が集中し、何から何まで社長の決裁がないと動かないというものが多い傾向にあります。 

平時は、この体制で動いているのだから全然問題ないし、この体制で業績が上がっている以上、私がとやかく言う筋合いではありません。

  

M&Aでは組織的な体制作りが急務となります

 しかし、ことM&Aを意識するならば話は別です。 

なぜでしょうか? 

結論から言えば、こうなります。 

アフターM&Aで、社長が経営の第一線を引いた途端、会社が回らなくなる可能性が高くなります。 

今まで、権限の全てを握っていた人がいなくなった途端、業務が回らなくなる可能性が高いからです。

それに得意先や仕入れ先、ましてや取引銀行も社長の実力を評価して取引していた面も否定できません。 

その社長がいなくなれば差し障りが出てくるのは当たり前です。

 したがって、M&Aを意識するならば、従業員に権限委譲を計り、組織的に会社を動かす体制を作るべきです。

 

 

❐ 組織的な体制作りはM&Aと同時並行で 

また、相談時に社長さんから、二つの質問を受けました。 

一つは、「M&Aは組織的に動く体制作りを終えてからの方が良いでしょうか。」という質問です。 

この答えは、M&Aと同時並行して行うべきです。

 なぜならば、組織ができてからなどと悠長なことを言っていると、経済情勢が大きく変化し、業績が変化してM&Aができなくなってしまうことも往々にして起きてしまうからです。 

M&Aと同時並行して、一気呵成に組織的な動きをする体制を作り上げることが必要です。

  

❐ 人材育成は平時での課題 

もう一つの質問は、「人員を新しく入れた方が良いのでしょうか。」という質問です。 

この答えは、できれば現有人員で行なうべきです。 

理由は2つ。 

1つは、新人を入れても育つまでに時間ばかりかかるし、また新人が途中で退職してしまう可能性を否定できないからです。 

もう1つは、人員の増強は、コストアップ要因になるので即戦力以外は足手まといになる可能性が高い点です。 

中小企業の場合、利益率を平均以上得ていることが少なく、市場競争の下、厳しい競争環境下の中で営業をしています。 

余計に人員を入れれば、それだけで利益を圧迫する可能性が高くなります。 

即戦力で収益を直ぐに稼ぎ出せる人ならばともかく、そうでない人員増強は企業価値算定の上からもマイナスになる可能性が高くなるからです。 

計画的な人材育成は平時に行っておくべき課題です。 

M&Aの時に行なうべき課題とは異なると考えます。

事業承継者が実務に追われてばかりで良いのでしょうか?

❐ 実務にのめり込む若社長さん 

先日、とある会社の会長さんから次のような質問をいただきました。 

「事業承継者と考えている息子さんが、仕事が好きで実務に没頭している。」が、良いものでしょうか。 

毎日、朝は8時くらいから夜12時近くまで働いて、仕事に没頭している息子さんの体を心配しているような口調でした。 

「仕事に没頭しているなんて良いですね。」と応えながら、私は、別の面から、会長さんの会社の将来が心配でした。 

 

 

❐ 実務は社員でもできるが経営は経営者でないとできない

 経営者たるもの、実務も大事ですが、本来の仕事は経営にあるという点です。

 毎日の仕事をこなすのは、仕事ができる従業員で充分です。

 しかし、経営は経営者たる社長さんしかできないのです。

 従業員がまだ育っておらず、右腕になるような人材がいない状況にありました。

 会社が組織的に動くようになっていれば、仕事を任せられる人材が育ってくるようになります。

 しかし、組織的に動いていない会社だと、仕事が属人的にしか回せないことになります。

 場合によっては、社長が荷受け、現場管理や接客をしなければならなくなり経営が疎かになりかねません。

 

 

❐ 実務から離れて経営を考える時間をとるのも有効 

その会社では、社長さんは週に一日だけ休日をとっているとのことです。 

社長が休んでしまえば、会社が回らなくなるためだそうです。 

私は、経営について考えるために、もう一日休みをとってはいかがでしょうか。 

一日だけの休みだと、体の疲れをとるだけで終わってしまいます。 

経営について考え、会社のビジョンを描く時間を確保するという点からも、もう一日休まれると良いですよ。 

休むのは、職場に出てしまうと、つい業務に従事してしまう癖が抜けないからです。

 

 

❐ 経営計画を作成し、進捗管理することが有効 

その休みの日に、一日は体を休ませ、もう一日は経営を考え、場合によっては経営近代化を図るために中小企業診断士と一緒に経営計画などを作成するのも有効です。 

中小企業には、まだまだ経営計画などないことも多く、今後の事業展開を経営者がどう考えていたのか、これからどういう方面に注力して会社の業績をどの程度高めていくのか、目に見えない会社が多いのが実態です。 

事業計画を作成し、着実に計画案を実行させていくことこそ、経営者たる者の仕事です。

 M&Aにおいても事業計画があり、計画に対する進捗管理がなされている会社さんは安心して買収候補先企業を探せれます。