STEP3 M&Aの条件交渉とトップ面談

「うちの会社を欲しがる会社などあるの?」なんて疑問に持たれている方も多いと思います。M&Aの買い手は、どのような判断基準で買収先を探し、買収金額を決めているのでしょうか?このような疑問についてのQ&Aです。

一人で悩むよりも、アドバイザーに相談したり、ここを読まれたら案外、解答をみつけることができるかもしれません。

・M&A 交渉を成功させるために必要な心構えは?

・M&A 双方の言い値に開きがあるときはどうすれば良い?

・M&A 買い手企業にどんな点をアピールすればいいの?

・M&A 株式が分散しているのだけれど、どうすれば良い?

・M&A 名義株がある場合、どうすれば良い?

・M&A トップ会談って、どんなことを話し合うの?

・M&A 買い手企業から信頼を高めるための重要ポイント

M&Aで会社を売却するのに、ビジョンが必要になるのか?

M&A 交渉を成功させるために必要な心構えは?

あなたがM&Aで会社を手放そうとした原因は何ですか。 

そしてMAを通じて実現したいものはなにだったのでしょうか。

 

多くの中小企業の社長さんが後継者問題で悩まれた結果、MAを選択した原因は、このままでは自分が引退した後、会社を任せられる人がいない。 

後継者がいなければ、会社を清算して従業員を解雇しなければならない。 

結果的に、得意先にも迷惑をかけてしまう。 

それだったら、MAで会社を規模、実力ともに申し分ない信頼のおける会社に売却して従業員の雇用を維持させたい、得意先の面倒も今まで以上にみて上げたいというものでしょう。 

創業以来頑張ってきて会社を大きくしてきた。 

その成果をM&Aを通して現金化させ、新しい事業を起こしたい、という要求をお持ちの社長さんもいると思います。 

中には、もはや年齢的にも仕事が限界に近いからできれば引退したい。 

引退資金を会社の株を売却することで手に入れたい、と考えてMAを選択なさった方もみえると思います。 

また、事業は順調に拡大して収益も伸びているのだが、事業に対する情熱が失われてきた気がする。 

このままだと今伸びている事業だが社長である自分の仕事に対する情熱不足で頓挫しかねない。 

今の事業を欲しい企業なり人がいれば、バトンを手渡して楽になりたい、と願っている方もいるかもしれません。

 

MAを選択して企業を他の会社に売却しようという選択をした原因に応じて、MAを通じて実現したいもの、これだけは譲れないものは人それぞれ、当然に異なってきます。

 

引退後に従業員が心置きなく仕事をして得意先も満足するような仕事内容を実現できるような企業さんに会社を譲ることが一番大事だと考えている社長さん。 

自分が手塩をかけて大事に育ててきた企業だから、自分の能力、今までの仕事内容を評価してほしい、その評価結果は売却金額の多寡だと考えている社長さん。

 

老後引退資金が必要だ。 

年金も含めて年額〇〇百万円程度は必要になる。 

そのためには会社の売却金額は最低〇億円以上は欲しい。 

これだけは譲れないと考えている社長さん。

 創業以来頑張って大きくした会社を売りに出すのだ。 

創業者利潤として最低限〇〇億円程度はもらわないとプライドが許さない、と考えている社長さん。

 

このように売り手企業の社長さんがMAを選択した原因はそれぞれです。 

その原因に応じて、MAを通して自分が実現したいと願っている、またはこの部分は相手側に対して譲歩しても構わないけれど、これだけは譲れないものがあると思います。 

その優先順位をハッキリさせて交渉に臨むことが交渉を成立させるために必要になると思います。 

 

他方、MAが他社との交渉である以上、相手側が必ず存在します。相手側は、なにのためにMAを行なっているのでしょうか?

 

多くの企業は変化が激しい中で、時間をかけて会社の業績を伸ばす余裕がありません。 

その中で、他社を買収し、時間を買う感覚で企業買収に動いているのではないでしょうか。

 

買い手企業がM&Aで企業買収する目的は、大きく分けて3つ程度に絞られます。 

1つ目は、売上高を大きくさせて業界内のシェアを高めたい。 

2つ目は、利益率を向上させて株主からの期待に応えたい。 

3つ目は、多角化を図って異分野の成長を企業内に取り込みたい。 

そして売り手の価値判断基準が様々なのに対して、買い手企業の価値判断基準は一つです。 

投資採算性が合うのか、という点に尽きます。 

高い金を出して企業を買収するのです。 

失敗はしたくない、というのがどの企業でも願うことです。 

そのため、買収先企業が組織的にしっかりした企業なのかどうか。 

利益をきっちり生みだせる企業なのかどうか。 

売上げ、収益の今後の伸びが期待できる企業なのかどうか。 

こういったことを重視します。

 

買い手企業の、価値判断や不安感を理解することが交渉を成立させるためには必要です。 

買い手企業の不安を払しょくして、この会社を買っても大丈夫ですよと買い手企業に思ってもらえるようにすべきです。 

売り手企業は、社長の権限を部下のキーマンに委譲し、属人的な仕事の進め方を排し組織的に仕事を達成できる体制を作り、会社に利益が残るような体制作りを早い段階で準備しておくべきです。 

 

企業も人の集まりです。 

最後は相手との信頼感を持てられるのかどうか、です。 

不動産や設備等への投資と異なり企業への投資は、見えない部分が多く、経営してみないと、結果が判りません。 

買い手企業は、「買って果たして大丈夫なのか。」という不安を常に持っています。 

他方、売り手企業は手塩にかけて育ててきた企業を手放すわけですから、「果たして相手企業で大丈夫なのか。」という不安感を持っています。 

相手を出し抜こうなどという魂胆ではM&Aはうまくいきません。 

そういう気持ちは、相手に見透かされてしまいます。 

最後は、やはり相手との信頼感を生みだせることができるのかどうかが、交渉を成立させるために必要となります。

M&A 双方の言い値に開きがある場合はどうしたら良い?

MAで売り手が提示する価格と買い手の希望価格とには、通常開きがあります。 

売り手側は、自分が今まで経営してきたことに自負を持っていますし、会社に対して愛着がありますから、第3者が考えている以上に自社を高く見積もる傾向にあります。 

売り手は、1円でも高く売りたい、と希望するのが普通です。 

他方、買い手は、投資採算性を計算してきますし、投資額を何年で回収できるのかということを冷徹に計算して交渉の席に臨みます。 

したがって、買い手は1円でも安く買いたい、と希望するのが普通です。 

当事者の相互に、このような感情や思惑がありますから、買収価格に開きがあるのが当然です。  

しかし、両者の希望価格の間に極端に大きな開きがある場合、価格を再検討する必要があります。 

 

MAでの中小企業の評価額は、「時価純資産額方式で求めた価格に営業権を加算した額」で評価されることが一般的です。 

これを数式で表すと以下の式となります。

 

中小企業の評価額 = 時価純資産額 + 営業権の価額

 

したがって、売り手企業と買い手企業との価額に大きな開差が生じている場合、どこにその原因があるのかを考える必要があります。 

営業権の価格は、通常、35年程度で評価される利益額ですから、大きな開差は生じにくいと考えます。 

開差の原因が営業権の価格でないならば、時価純資産額で生じている可能性が高くなります。

 

企業の資産のボリューム並びに金額ともに、大きな部分を占めるのは、通常、不動産です。 

この不動産の中で、MAで不要不急の部分がどの程度あるのか検討することです。

 

買い手企業にすれば、利益を生みだすのに必要な不動産は高く評価するでしょうが、本業に関係しないで、利益を生みださない不動産に価値を見い出しません。 

本業に関係のない不要不急の不動産が大きな金額を占めるのならば、売り手企業の社長が経営する別会社に不動産を移転させることを考えてみるのも手です。 

売り手企業の資産内容を見直し、本業と関係ない部分を処分し、身軽にすることで評価額を下げることが可能になります。 

 

次に、検討すべきなのはMAで売り渡す株式を複数回に分けること、です。 

一時に100%の株式を譲渡するとなると譲渡金額が膨らみます。 

2回に分けて株式を譲渡すれば、買い手企業にとり財務負担が少なくなります。 

ただし、株式を複数回に分けて譲渡することには、注意点があります。 

中小企業の業績は景気動向に大きく左右されます。 

複数回に分けて株式を売却する場合、次回に売却するとき、景気が悪化し、それに伴って業績も悪化した場合、売却金額について双方に折り合いがつくかどうかという問題が生じる点です。 

業績悪化中、売り手企業の社長が会社に在籍して社業に従事していた場合、業績悪化の結果責任が相手先企業から問われます。 

業績が悪化し、その責任もあるのだから、残った部分の株式は相当安くしてもらわないと困る。 

買い手企業が、このように言ってきた場合、反論が難しい点があることに注意すべきです。

M&A 買い手企業にどんな点をアピールすれば良いの?

物やサービスの販売では、皆さんが顧客に対してアピールする点はどんな点でしょうか? 

自社商品の優秀さ、デザインの良さ、製品の耐久性や使い買っての良さでしょうか? 

徹底したサービス、サービス品質の高さや価格の手ごろ感でしょうか? 

どれも正解かも知れません。

 

しかし、どんなことをアピールしても、顧客が一番反応するのは、貴社の商品やサービスが、顧客が抱えている問題点を解決できる点や顧客が抱えている不満を解消することができる点なのではないでしょうか? 

顧客が腰痛に悩んでいる方だったら、「腰痛に良く効くという整体」という点をアピールすれば、一度行ってみようかという気持ちになるかもしれません。 

顧客がハウスダストに悩まされている方だったら、「ハウスダストを良く吸い取る掃除機」という点をアピールすれば、貴社の掃除機に興味を持つはずです。

 

MAでも、商売の基本は同じはずです。 

買い手企業が抱えている問題や不満を貴社が解決できる点をアピールすれば、買い手企業が貴社に対して反応するはずです。

 

では、買い手企業が抱えている問題点はなにでしょうか? 

それを知るためには、買い手企業がMAを行なう理由を考えてみることです。 

多くの企業は変化が激しい中で、時間をかけて会社の業績を伸ばす余裕がありません。 

その中で他社を買収することで時間を買う感覚で企業買収に動いているのです。 

 

買い手企業がM&Aを実施する目的は、大きく分けて3つ程度に絞り込めます。 

1つ目は、売上高を大きくさせて業界内のシェアを高くさせたい。 

2つ目は、利益率を向上させて株主からの期待に応えたい。 

3つ目は、多角化を図って異分野の成長を企業内に取り込みたい。 

 

3つ目の成長が著しい異分野なのかどうかは業種によって異なりますから、考慮外といましょう。 

残ったのは、1つ目と2つ目の理由です。 

売上高のアップ、収益力の拡大がMAの目的と言っても過言ではありません。 

このことから、貴社が、買い手企業の売上高のアップや収益力の拡大に貢献できる点をアピールすべきことが、一番のアピールポイントであることが解ります。 

聞けば、当たり前のことなのですけれどね。

 

利益をだすためには、大きく分けて2つの考え方があります。 

一つ目は、外部環境を重視し、外部環境に自社を適合させる考え方です。 

二つ目は、内部環境を重視しそれを整える考え方です。

 

ここでは内部環境について考えてみましょう。 

中小企業では社長の存在が大きく、社長が営業から製品開発までこなしてしまうような場合も見受けられます。 

中小企業の場合、内部リソースが大企業に比較して弱いため、どうしても社長が切り盛りしてしまうのです。 

しかし、これではMAの結果、社長が引退後には会社が回らなくなることが予想されます。 

権限委譲を進め、属人的な仕事の進め方を排し、組織的に仕事を進める体制を固めることも買い手から評価されるために必要です。 

 

また、社内でキーマンを育成し、彼らに権限を委譲すると共に責任を持たせ、社内組織をしっかりさせて利益を生みだせる体制を作っておくことが肝要かと思います。 

そして、公私の別を明確化させ、過剰な節税や経費利用による利益の圧縮をさせない、利益を生み出す力のある企業であることを買い手企業にはっきりと解らせることが必要になります。

 

会社が利益を生みだし、生み出された利益が社業に再投資され、再び利益を生みだす循環環境があることが強みであり、先方にアピールすべき点かと考えます。 

その上で、会社独自のブランド力、他社にはない高い製品開発力、特許、生産管理能力、品質管理能力や物流システム等があれば、それらをアピールすればいいのです。 

売上を作り、収益を生みだす力こそが基礎なのです。

M&A 株式が分散しているのだけれどどうしたら良い?

社長が全ての株式を保有してMAで買い手企業に100%株式を売却できれば、何ら問題はありません。 

しかし、100%の株式を社長が保有しておらず、役員、従業員や親族等が保有している会社もあります。

 

その場合、社長が各株主から会社売却の同意を取り付けておくか、社長自身が他の株主から事前に株を買い集めておく必要があります。 

同意を得ることは売り手企業の社長の仕事です。 

社長が株主から株を事前に買収しておく場合はともかくとして、各株主から同意を取り付けておく場合は、買い手企業との株式売却の交渉は、各株主が個別に交渉するのではなく、社長が一括して買い手企業と交渉することになります。 

同意を得るにしても売却価格がいくらなのか判らない状態で同意の取り付けは難しいのが現実です。 

また、余り早い段階で株主から会社売却の同意を得ようとすると、売却の秘密が外部に漏れる可能性が高まります。 

したがって、他の株主からの同意は、売却価格についての合意がなされたのち、買い手企業と会社売却についての基本合意がなされる頃までになされる必要があります。 

 

社長自身が他の株主から事前に株を買い集めておく場合、注意すべき点があります。 

買い取る時期と買い取り価格です。

 

買い取る時期ですが、M&Aを開始してから、他の株主から株を買い取る場合、M&Aの交渉が進んでいることを説明しなければならなくなります。 

他の株主からの同意を得る場合と同様に、株主だからと言って従業員であったり、従業員と近い人であればM&Aの交渉が進んでいる事実が他の従業員に漏れる可能性が高いので、お勧めしません。 

他の株主から株式を買収するのならば、M&Aを開始する相当の以前から、計画的に会社の株式を社長の基に集めておくのが良いでしょう。 

M&Aの相手方である買い手企業が原則100%の株式の買収を希望する場合、他の少数株主が存在する場合、社長としてはその時点で買い手企業に事情を説明して納得してもらうか、買収価格を相当下げて売却する等するしかなく、M&Aの交渉に大きな障害となり難度を高める可能性が高まります。 

そのため、事前に少数株主の株を社長が買い集めておくことは、M&Aの難度を低くすることができます。

 

この時の買収価格ですが、M&Aを意識して安い価格で他の株主から譲り受けるのではM&Aが成立した後にM&Aでの買収価格と他の株主からの事前の買収価格とが極端に開きがあると道義的、倫理的な問題が生じます。 

M&A成立後に他の株主に説明できるような価格である必要が生じます。 

また、時価よりも極端に低い価格で他の株主の株を買収することは、道義的、倫理的な問題が生じるのとは別に、税務上問題が生じる可能性が高くなります。 

買収価格が時価よりも極端に低いとなると低廉譲渡と税務当局からみなされ贈与税の対象となる可能性が高くなります。 

買収価格は、税理士等に相談の上、市場価格程度で決定することが妥当です。

 

なお、会社が株主から株を購入することは法的に認められ、金庫株と言われるものです。 

社長でなく、売り手企業自身が自社株を少数株主から購入することは、会社の現金を支出して自社株を購入することになるので会社の内部留保を取り崩すことになります。 

その結果、会社の純資産額が小さくなるので「純資産額に営業権を加えて評価する中小企業の企業価値」が小さくなり株価も当然に安くなってしまいます。 

M&Aの買い手企業から見れば、M&Aに際して買収価格が低くなるので歓迎できることです。 

しかし、売り手側から見れば企業価値が低くなり、M&Aの売却価格が低くなるので歓迎できない事態となることに注意して下さい。 

また、少数株主から見れば、会社に株式を売却することは、会社から配当を受けるのと同様な行為になります。 

社長、M&Aの買い手企業や第三者に株式を売却すれば売却益は譲渡益課税として分離課税の対象となります。 

他方、会社に株式を売却すれば総合課税の配当所得となり、わざわざ多くの金額を納税する必要が生じてしまう結果になりますので注意が必要です。

M&A 名義株がある場合、どうしたら良い?

名義株とは、名義上株主となってはいるものの、出資金を払い込んでいないため株主の実態がない名前だけ貸したこととなっている株式のことです。 

なぜ、名義株のようなものが存在するのかと言えば、平成2年の商法改正以前までは株式会社設立のためには7人以上の発起人による株式の引き受けが必要とされたことが原因です。 

会社設立要件を充たすために、真実の出資者が名義だけを他人から借り会社設立を行なったのです。 

会社設立後に、名義を貸してくれた人から、「名義人になっただけで株主としての実体はない。」という念書を社長がとっていれば問題はなかったのです。

 

しかし、多くの会社では、そのまま放置されました。 

その結果、名義だけを貸しただけなのか、株主としての実態があるのかが時間の経過によって不明となり、特にM&Aで名義株の問題が噴出することになりました。

 名義だけ貸した人が株主としてM&Aにおける会社の売却金額の対価を受領することとなり、真の株主の対価がその分少なくなるという問題が起きたのです。

 

また、名義株の名義人が、時間の経過に伴い所在が判らなくなるという事態が起きるようになりました。 

こうなると、いざM&Aをしようにも名義株の所有者が所在不明では名義人から上記の念書をもらうことができません。 

法律は、5年以上所在不明の株主については一定の要件の下で所在不明の株主の株を会社が処分することを認めています。 

しかし、会社が所在不明の株主の株を処分するには一定の要件と相当な時間がかかります。 

M&Aをいざしようとしても、所在不明の株主から買取りができないのでM&Aができないという事態になってしまいます。 

 

このような事態を避けるために、名義株の処理を事前に行っておく必要があります。 

名義株の処理を行なっていない場合、M&Aは事実上、不可能だと考えて下さい。 

まず、株式が名義株なのかどうかを特定させる必要があります。 

株券を渡していたり、過去に配当を名義株主に支払っていた事実がある場合、その株主は名義株主ではなく、実際の株主とみなされます。 

 

次いで、名義株であることが確実な場合、以下の処理が必要になります。 

名義株の所有者から、「所有する株が名義株である。」旨の念書を頂く必要があります。

 

また、会社に対して名義書き換えの請求を行ない、取締役会で承認の上、株主名簿を変更しておく必要があります。 

勝手に株主名簿を書き換えるようにことを行なっても、法的には無効となりますので、くれぐれもご注意いただければと思います。 

これ等の作業は、あくまで売り手企業の社長さんが行っておくべきことです。

 

なお、以上の解説は、あくまで一般論です。参考として下さい。 

個別具体的、法的な問題については、弁護士さんに必ず照会し確認の上で、必要な法的正当性が認められる手順を遵守する必要がある点を注意して処理して下さい。

M&A トップ会談って、どんなことを話し合うの?

買い手企業がM&A仲介機関と秘密保持契約並びに提携仲介契約を締結し、本格的に検討に入ると、売り手企業及び買い手企業のトップ同士の会談を設定させて頂きます。

 

売り手企業は、買い手企業とM&A仲介機関を通して売却金額を含めた条件の交渉を行なうこととなります。 

同様に、買い手企業も、M&A仲介機関を通じて紹介された売り手企業の資料を分析し、企業価値を評価し、希望購入価額を計算したり、買収によって実現可能なシナジーの種類や程度を計算し、M&A仲介機関を通して交渉することとなります。 

これ等の交渉が本格的になる前に、一度、トップ同士が面談して相手との相互信頼感を作っていくファーストステップがトップ面談だと考えて頂ければいいと思います。 

 

では、なぜこのような会談がなされるのでしょうか。 

M&Aを企業同士の結婚に例えるならば、トップ面談はお見合いの席と言っても良いでしょう。

 結婚の話をこれから進めていくのか、断わりを入れるのかも、先ずは相手と会ってからというのがお見合いだと思います。 

気が合うのか、これから結婚という長い生活を一緒にできるのかどうか、会った時の第一印象やフィーリングって、結構、大事です。 

お見合いと同様に、トップ面談でトップ同士が会って、相手企業が信頼できるものなのかどうか、今後の交渉を継続するのかどうかを判断するためです。

 

また、トップ会談がなされることで契約締結の可能性が飛躍的に高まるからです。 

これは、米国の社会心理学者の実験からも証明されているのです。 

この実験では、e-mailを使用して契約交渉をしていた当事者のうち、契約相手と対面したグループと対面せずにそのままe-mailで交渉を続けたグループに分けました。 

2つのグループのうち、契約相手と面談したグループの方がe-mailのみで契約交渉を続けたグループよりも高い成約率を得ることができたのです。 

これは我々の感覚からも納得できる結果だと思います。 

相手との信頼感を作り出すためには、相手と面談し、相互に知り合うことが必要だと、我々も日常のビジネス活動で感覚的に理解しているはずです。 

 

さて、トップ会談では、どのような事柄を話し合うべきなのでしょうか。 

トップ面談は、相互信頼感を作っていくファーストステップです。 

価格交渉等の相互に交渉が必要になる事項についての話し合いは行わないのが基本です。 

相互の信頼感を醸成し、相手に好印象を抱いてもらえるように振る舞い、話し合う内容もそれに沿ったものでありたいものです。 

M&Aが企業の結婚だと考えれば、トップ面談はお見合いみたいなものだと先ほどお話しました。 

お見合いでは、自己紹介をして、相手がどんな人なのか、どんな仕事をしているのか、将来の夢はどのようなものなのかをお互いに話し合いますよね。 

もちろん、相手の第一印象が悪くて、話し合いまで到達できなければ別ですが・・・

 

トップ面談も、お互いに自己紹介をして、相手の経営者はどんな人柄なのか、経営者としてどのような目的、意義やビジョンをもって経営しているのか、そして会社の業務内容や事業の特色、自社の強みや弱点等を要領よく話します。 

 

買い手企業は、売り手企業の社長の口から、買収する会社の力量を知りたいはずです。 

事業環境はどうなのか、その事業環境の中で買収会社はどのような強みがあるのか、長年の間、経営者としてその事業環境の中でどんな強みを作り出して生き残りをかけてきたのか、その結果がどうだったのか、という点について知りたいはずです。 

その言葉から買収する会社並びに旧経営陣の力量が推察されるわけです。

 

売り手企業は、買い手企業の社長の口から、なぜ自社を買収しようと考えたのか、買収後の経営をどうしようと考えているのか、買収後にはどのような会社にしたいのか等、相手の意図を知りたいはずだからです。

M&A 買い手企業からの信頼を高めるための重要ポイント

あなたの会社をぜひ譲ってほしいという買い手企業が現れても、その後の対応次第では話が頓挫してしまうことも珍しくはありません。

どうすれば買い手企業からの信頼を高め、話をスムースに進めることができるのかお話したいと思います。


M&Aには一定の秩序的手順があります。

この手順は、当社のホームページに掲載してありますから、是非そちらをご覧ください。

この手順をスムースに運ぶためには、売り手企業の協力が欠かせません。

 

秘密維持契約の締結後、当社が買い手企業に売り手企業の概要書を引き渡します。

この概要書に基づき、買い手企業は買収の如何並びに買収金額を決定することとなります。

そして必要があれば、順次、資料を提供することとなります。

もちろん、秘密維持の観点から全ての資料をこの段階で提供する必要はありません。

基本契約を行ない、買い手企業が売り手企業の詳細調査(ビジネス・デューデリ)を行ないます。

 

この手順の中で弊社並びに買い手企業から必要とされた資料がスムースに出てこないことがあります。

弊社からお願いする資料は買い手企業を探し出しマッチングをはかる上で必要となる貴社の概要書を作成する上で欠かせないものです。

この概要書を見て株式の買収を行なうのかどうかを買い手企業が決定します。

ですから、不充分な資料しか提供されない場合、買い手企業の買収案件の俎上(そじょう:まないたのこと)にも上がりません。

また、俎上に上がったとしても、資料不足によって不充分な検討しかできなくなり、売り手側は何か隠しているのではないかと不信感を買う可能性もあります。

不信感が広がると、まず買収の可能性はなくなりますから充分に留意する必要があります。

 

M&Aは交渉事ですから、お互いの利害が衝突する部分があります。

特に利害が衝突する部分は買収金額です。

売り手は自社への愛着や長年の経営による自信から、つい高い金額を設定する傾向にあります。

しかし、買い手企業は感情や自信などは脇に置いて、投資案件として数値上の冷徹な判断を行ないます。

投資したら、投資額を何年で回収できるのか、利回りはなん%になるのか。

投資することで会社全体の収益にどの程度貢献してくれるのか、その程度はどうなのか。

これらを事業計画に基づいて数値をエクセルに落とし込んで計算し、計算結果に基づいた価格付けを行ないます。

したがって、売り手企業が提示する買収金額は買い手企業が考えている金額よりも低いことが多い傾向にあります。

低い提示額を見て、売り手企業の社長が感情的に反発したりして交渉の席を立ってしまっては相手からの信頼を失ってしまいます。

相手が提示した金額の背後にある考え方も相手企業から聞く必要があります。

同時に、相手企業に対して売り手企業の考えを丁寧に説明していくことが是非とも必要となります。

なぜ、この金額で売りたいのか、この金額の根拠となったものはどのようなものなのかを理論的に説明していく必要があるのです。

 


最後に、企業内の不祥事や問題点についてどこまで話していいのかという疑問をお持ちの方もいると思います。

この点についての答えは、自分から全て言うことが必要ということです。

M&Aでは基本契約締結後に買い手企業が売り手企業の詳細調査を実施すると既に述べました。

その時点まで隠しておいて、詳細調査で問題点が発覚したのではお互いの信頼感が一挙に崩れてしまいます。

また、隠すつもりがない場合でも、買い手企業にとって善意なのか悪意なのかの判別が困難である以上、信頼感をなくしM&A自体が白紙に戻されることになります。

他方、最初から全ての問題点や不祥事を買い手企業に告白すれば買収案件の俎上から外されてしまう可能性があります。

特に労働問題、組合問題、簿外債務には神経質になっている企業が多いのが実態です。

買収金額の提示と買収の基本合意前までの早い段階までには不祥事や問題点を買い手企業に正直に申し述べる必要がある点は是非とも留意して下さい。

M&Aで会社を売却するのに、ビジョンが必要になるのか?

先日、ある会社の社長さんとM&Aでもビジョンが必要だということを話していました。 

そうしたら、その社長さんが、こう質問したのです。 

「これから会社を他社に売り渡すのに、売り渡す社長に経営のビジョンが必要なのか?」

 

❐ ビジョンは必要です

このような質問を受けた私は、その社長さんにこう答えました。 

「ええ、ビジョンが必要ですよ。」 

他社に会社を売却すれば、もう自分の手を離れてしまうので、ビジョンも何もへったくれも必要ないだろうと考える社長さんもいるかもしれません。 

 

しかし、会社を他社に委ねるに当たっては、 

「今まで、自社をどう理念を持ち、それを実現するためにどんな戦略を採用して経営してきたのか、その結果、どういう利点が当社に揃っているのか。 

そして今後はどういうビジョンで経営に当っていき社業を伸ばしていこうと思っていたのか。」

 

このような経営信念を持っている必要があると私は思うのです。 

もう会社を手放し、経営の第一線から身をひくから、ビジョンなど必要ない、という考えは持つべきではないと私は考えるのです。

 

 ❐ 買い手も売り手企業のビジョンをみます

それは買い手企業さんから見ても、ビジョンなき会社は敬遠されると思います。 

「売り払うのだから、まぁ良いか。」と言う姿勢で経営された会社と「売るにしても相手先に売り払うまでは自分の会社だから、それまでは経営を通じて社会に対して、実現させたい思い」を持ち経営されてきた会社とでは、大きな開きがあると思うのです。 

それは自然と経営者の経営姿勢に現れてきますし、自ずと経営者の成績表である財務諸表に出てくるものだと思います。 

もし、経営ビジョンがないままで日頃の経営に当っていたとすれば、M&Aを依頼なさってからでも遅くはありません。 

M&Aの作業と同時並行して、早い段階で自社を見つめ直してビジョンをまとめて頂ければと思います。